2002.6〜2002.9
9月30日 東川
『親介護シングルの急増』
 先日、日本経済新聞の記者より電話取材があった。「親を介護するシングル」に関してである。ここ10年急増してきた、親に「パラサイト」(「寄生」転じて親に経済的援助をしてもらう意)しているシングルは今後、親子ともども歳を重ね、親はリタイアして子に対して経済的援助ができなくなり、さらに親が後期高齢者(75歳以上)ともなれば、要介護の親をシングルの子が介護することになる。国の都道府県別世帯推計結果においても「親介護シングル」の今後の急増は明らかである(この点については一昨年の日本都市学会にて報告した)。現在、少子化の原因として指摘されるパラサイト・シングルは今後、高齢化問題の大きな課題となることはまちがいがない。これを見込んだ介護ニーズの将来予測が必須である。と同時に、現在もしくは将来に予測される問題に取り組むことこそ、研究者の重要な役割と考える。
9月24日 小林
『地域と姓』
 子供の頃、自分の姓が、あまりにありきたりなため、好きになれなかった。静岡大学城岡研究室の調べによると、全国の電話帳登録件数の最多は「佐藤」姓で、以下、鈴木・高橋・田中・渡辺・伊藤・山本・中村・小林・加藤‥と続く。やはり「小林」姓は多い。
   どんな姓が多いかには、地域差がある。試みに、四日市市内での電話帳登録件数を見ると、最多はダントツで「伊藤」姓で、以下、加藤・小林・田中・水谷・鈴木・森・渡辺・山本・佐藤・中村・服部‥と続いている。全国の登録件数では100位以下の「水谷」姓や「服部」姓の登録件数が多いなどといった特徴が見られ、興味深い。
   日本の姓には土地と密接に結びついているものが多い。つまり姓の偏在は、それぞれの地域に異なる歴史的背景があることを示している。地域で政策を考えるに際しては、こうした地域ごとの違いにも、思いを馳せていきたいものである。参考)静岡大学城岡研究室ホームページhttp://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~jjksiro/shiro.html
9月17日 土屋
『情報発信』
 メディアリテラシーという言葉を耳にするようになって久しい。インターネットに関していえば膨大な情報量からいかに取捨選択し、なおかつ活用できるかという受け手側の能力が問われるわけだ。
  しかし、それ以前に情報が単なるデータや状況の伝達ではなく発信側の考えや意図がプラスされたものであるとするならば、そこには発信する側の能力や責任も問われることを常に念頭におかなければならない。
 稚拙ながらホームページ作成業務に携わるものとして、自らの立場にあてはめてみる。ともすればディスプレイの向こう側の存在を忘れがちになる。情報を発信しているという意識よりも更新作業はルーティンワーク(原稿をだしてもらえずルーティンにならないつらさもあるが…)のひとつとして多くの処理のなかに埋没してしまう。
  webページの基本とされるimageable・impressive・interactiveの3つの「i」を満たす工夫を怠らず、常に更新することを責任と感じていたい。
9月2日 福島
『既存資源の有効活用』
 四日市に来て1年以上が過ぎた。東京生まれ、東京育ちの私にとって、四日市の生活はなにもかも新鮮だった。自動車を持っていることが前提となる生活、電車に乗るときは時刻表をみてから出かけるという習慣など生活スタイルが一転した。不便といえば、不便であるが、わたしなりに結構楽しんでいる。なかでも、2週に一度は温泉に行くのは、とても楽しい。
  この地域は、自然もおおく観光には事欠かない。しかし、いわゆる四日市っ子に話を聞けば、こうした観光資源に私ほど関心をもっていない。思えば、わたしも、東京で暮らしていたときには、それほど東京の観光資源に興味を持っていなかった。なにしろ、東京タワーにのぼったのは、24歳のときであった。
  なにがいいたいのかというと、自分の住む地域にはいろいろな資源がある。その地域で生まれ長く暮らしていると、それがあたりまえのことになり見落としがちになる。地域の発展を考えるとき、まずはこうした既存の資源を認識し、その有効活用を考えなければいけないと日々痛感している。
9月26日 大久保
『2050年の高齢者として』
 夏が終わった。歳を重ねるとともに季節の移り変わりが早いように感じる。梅雨が明けて少しの期間暑かったと思ったら、もう台風到来の季節・・・TVゲームも携帯電話もなかった自分の小学生時代の夏休みはとても長く感じたものだ。
  私たちは日々あふれんばかりの情報に飛びつき、そしていつの間にか忘れていく。インターネットの高速通信に慣れてしまい何秒かの差で遅いと文句を言い、次々と情報を貪ってはそれを実行に移そうと奔走している。
  2002年8月現在、日本人の平均寿命は男性78.07歳、女性84.93歳。私たちがこの年齢になっても相変わらず忙しく毎日を過ごしているのだろうか。しかし現在この年齢に近い方々は、パソコンも使わず、車も運転せず、案外毎日ゆったりと長い時間を過ごしているのかもしれない。
  我々は2050年の高齢者、あっという間にその時はやってくる。
8月19日 岩谷
『魅力的な宿づくり推進』
 昨年9月のアメリカ同時多発テロ事件以降、旅行客は海外から国内へ回帰していると聞く。昨今の旅行では従来のように団体であくせく行動することは好まれず、カップルや家族連れが小さく贅沢な隠れ家的宿に篭り、一日中何をするでもなくゆったりとした時間を過ごす、というスタイルが人気だそうだ。
   その種の宿泊施設を紹介する書籍は、今年に入ってからだけでも『二人で行く旨い宿−厳選100軒』(世界文化社)、『dancyu全部うまい宿』(プレジデント社)、『こころを癒す自然の宿』(新潮社)、『女性に心地よい名旅館』(小学館)など立て続けに出版されており、また雑誌での特集も男性誌、女性誌を問わず目立つ。
   残念なことは、それらの書籍や雑誌で紹介されている宿の中に、地元湯の山温泉の旅館やホテルがほとんど見当たらないという点だ。由布院や黒川温泉などでは、個人や小グループに的を絞った宿同士が互いに協力し合い、同時に競い合いながら観光客を集めている。湯の山温泉の街全体を活性化させるためにも、魅力的な宿づくりが進むことを期待したい。
8月12日 神保
『御当地投資信託』
 「東海3県ファンド」という投資信託が発売されている。この投資信託の主な投資対象は「東海3県に本社があり、証券取引所に上場あるいは店頭市場に登録している日本法人の株式を主要投資対象」としている御当地投資信託(私が勝手に命名)である。
   このファンドの現在の組入株式上位には、中部電力・東海旅客鉄道・トヨタ自動車等の愛知県に本社をおく優良企業が占めている。三重県の企業はというと、県内に本社をおく企業が少ないせいか、組入銘柄対象企業も少ない。しかし、三重県のここ北勢地区には、全国レベルの企業がたくさん存在し、また、それら企業に従事する人たちがたくさん在住していることを考えると残念である。そして、東海3県の経済を応援するという視点から考えると、私個人的には、地域に事業展開し雇用を創出している企業に投資したほうが親しみ易く、且つ少しでも地域の活性化につながるのではないかと考える。
   そこで、少し調べてみると「DC静岡ベンチマークファンド」「九州特化型日本株式ファンド(愛称:がんばれ九州)」などは、その地域に進出・事業展開している企業も投資対象とする新設ファンドとして募集・販売されるようである。
8月9日 東川
『データの有効活用術』
 初めて書くこととなった。今回は出されたばかりの某経済誌による恒例の全都市ランキングをみてみたい。まず四日市市は698都市中、「1人当り製造品出荷額」で54位、「同小売業年間販売額」で133位となっている。ちなみに隣の鈴鹿市はそれぞれ21位、289位である。
  他に三重県内の都市で上位に入っているのは、「総合」で上野市が33位と健闘しているのが目を引く。他にも「経済力」では鈴鹿市が37位に。また「1人当り製造品出荷額」では亀山市が24位、上野市が42位になっている。生活面では「1000人当り医師数」で津市が17位。久居市が31位。「持ち家世帯比率」では名張市が28位となっている。
   逆にその意味するところを考えさせるランキングもある。一例を挙げれば「1000人当り金融機関店舗数」では熊野市が8位で東京都港区と同順位となっており、同市は「登録自動車1000台当り道路実延長」でも43位に入っている。
  数字の一人歩きに注意しつつ、単なる印象論、思い込みを排するためにデータを利用していきたい。
8月2日 小林
『コラム一新!』
 ここのコラムまで読んでくださるような、本ホームページの熱心な閲覧者であれば、既にお気づきであろう。そう、このコラム欄の名前は、先週から変わったのである。
  これまで「研究員のひとりごと」と題して拙文を掲載してきたが、事務方も含めた研究所スタッフ全員で、持ち回りで書いていこうということで、看板を変えたのである。
  持ちまわり第1回の先週担当してくれた土屋さんは、地元四日市に暮らすこと30余年の、事務スタッフである。私のように他所から来た者にはなかなか知ることのできない四日市の隅々まで熟知していて、常に適確に、我々の仕事をサポートしてくれている。
  大学の研究所というと、とかく我々研究者のみにスポットが当たりがちである。だが、地域に対する強い問題意識をもつ優秀なスタッフに支えられて、研究所業務は成り立っている。そうした研究所の雰囲気をも、このコラムから感じとって頂ければ幸いである。
7月26日 土屋
『まちづくりとは』
 近鉄四日市駅前のアムスクエアという専門店街が今月末で営業を打ち切り、8月1日から休館となる。同ビルは昨年5月に松坂屋が撤退。駅前の衰退が加速することは必至だ。
 商店街では空き店舗の活用、定期的な市の開催やフリーペーパーの発行などで集客にあれこれ策を講じているが、車で郊外型の店舗へというスタイルが定着してしまった人々を再び呼び戻すのは大変な苦労だ。30年程前の繁華街の記憶を持つ者にとっては寂しさを通り越し、危機感さえ抱く。
 改めてまちづくりを考えてみる。今あるものとないもの、つくれるものがあるとしたらその限界と可能性、アイデアと資本のバランスのとれた最良の策をみつけたい。おしつけの企画には継続性が伴わない。そこに住む人たちの心に響くものは、人任せでは決して実現しないだろう。自戒の念をこめて記したい。
 県ではe-デモという電子会議室を設け、地域が抱える課題等を語れる場としているのでここに紹介する。
e-デモ会議室 http://www.e-demo.pref.mie.jp/
7月22日 小林
 『四日市の環境は今・・・』
 7月24日は、ここ四日市市にとっては、四日市公害の判決が出た日である。四日市公害訴訟では、工場の煤煙による大気汚染の被害について争われた。
  判決から30年。各工場の努力もあり、大気の状況は相当改善された。だが、汚染が完全になくなったわけではない。市内納屋地区の二酸化窒素濃度は、全国ワースト10だ。汚染原因は自動車の排ガスに移ったが、依然として多くの人たちが、苦しめられている。
  根本的な解決のためには、自動車に頼らずに暮らせるまちのシステムを、つくる必要があるが、残念ながらそうしたまちづくりは、あまり進んでいない。自動車依存は、むしろ進んでいる。本学でも、私も含めて多くの教職員・学生が、自動車で通って来ている。
  市町村合併論議を契機に、まちづくりへの関心も高まってきている。これを機に、通過自動車の抑制、公共交通網の整備など、環境面からも、まちのあり方を再考してみたい。
※四日市公害についてはhttp://www.city.yokkaichi.mie.jp/kankyo/kogai.htmを参照されたい
7月15日 小林
 『災害ボランティアと若者』
 先週、列島各地は、台風6号にともなう大雨に見舞われた。東海地方でも多くの被害が出たが、中でも大垣市の荒崎地区では、多くの家屋が水に浸かった。
  台風が去り水はひいたが、被災家庭の生活の再建はむしろこれからだろう。水に浸かってしまった家では、家財道具の搬出やゴミの処理などに、多くの人手を必要としている。こうした状況を受け、復旧支援のための「災害ボランティアセンター」が開設された。
  センターには続々と、有志が駆け付けているという。阪神淡路大震災以降、定着してきた感があるこうしたボランティア活動の場では、多くの学生たちの活躍が見られる。
  最近の若者は社会への関心が乏しいなどと、しばしば耳にする。だが、こうした活動に自然に取り組んでいる学生たちの姿からは、成熟した市民社会の担い手としての、頼もしささえ感じられる。むしろ必要なのは、社会が若者を受け容れることではないか。
※ 同センターへの問い合わせは、電話0584(92)5112まで。
7月9日 小林
 『自覚は足りているか』
 7日、名古屋から新宿に向かうJR東海バスが、接触事故を起した。運転手の呼気1リットル中から、0.35ミリグラムのアルコールが検出されたという。酒気帯び運転である。
  事故を起した運転手は、23年勤務のベテランであったという。だが、それにしては、あまりにプロ意識が欠けている。人命を預かる者としての自覚が、感じられない。
  旧石器偽造事件、牛肉偽装事件、医療ミス隠蔽事件…。この運転手に限らず、昨今、プロとしての自覚の欠落を感じさせられる事件が、続発している。己の為すべきことに己の全能力を懸けるという、至極当たり前の姿勢が失われていることに、危機感を覚える。
  混迷する経済情勢の中で、我々は今一度自らを省みて、己の為すべきことは何なのか、しっかり自覚する必要があるのではないか。その自覚を持って各々が自らの役割を果たせば、きっと結果は出せると思うのだ。そう、サッカーW杯の日本代表チームのように。
7月1日 小林
 『地域の足 鉄道』
 高知県で今日、第3セクター土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」が開業した。県東部の海岸沿いJR後免駅から奈半利町を結ぶ地域の足として、今後の活用が期待される。
   しかしながら、自動車へのシフトなどによる利用者減少が続くなど、地方の鉄道事業を取り巻く環境は、どこも非常に厳しい。同じく第3セクターのしなの鉄道は、本年度中に債務超過に陥ることが、避けられない状況だという。
   バス路線との競合もあり、「ごめん・なはり線」も初年度から赤字が予想されている。地元出身の漫画家やなせたかし氏の協力により、全20駅に漫画キャラクターをつけて漫画列車として売り込むなど、誘客作戦も必死だが、黒字転換は至難だろう。
   だが鉄道は、車を運転しない高齢者でも一人で乗れ、高齢化の進む地域の足として重要な役割を担う。道路特定財源の転用など、地方の鉄道への抜本的な支援策が望まれる。
6月24日 小林
 『活かそう、投票機会』
 昨日6月23日、岡山県新見市で、全国で初めて電子投票が実施された。開票時間の短縮という面が強調されたが、自書の困難な人の投票がしやすくなった点も、評価したい。
  そして今日、愛知県高浜市議会では、住民投票条例改正案が全会一致で可決された。同市議会では既に2000年12月、対象を特定しない常設型の住民投票条例を可決しているが、今回の改正ではこの投票資格が、永住外国人に拡大され、満18歳以上に引き下げられた。
 投票は、住民の意思表示の、最もシンプルで基本的な形である。上記のいずれの出来事も、その機会を広げる出来事であり、そうした意味で、先ずは喜びたい。
  だが、この機会を生かすも殺すも住民次第である。投票機会をより良い地域づくりのために有効に活用するという自覚をもって、衆愚政治の謗りを受けないよう、適切な情報に基づく適確な判断をしていく努力が、地域住民には求められるのである。
注)高浜市の条例についてはhttp://www.city.takahama.aichi.jp/jyouhou/jyuumin_kai.htm参照
6月13日 小林
 『W杯と国際交流』
 サッカーのW杯が盛り上がっている。しかし、この開催までには多くの時間や労力・費用がかけられてきた。恐らくその合計は、直接的な経済効果をはるかに上回るだろう。四日市市のとなり鈴鹿市でも、5000万円という費用を負担して、コスタリカのプレキャンプを受け入れた。
  短期的に見れば、それに見合った効果は、むろん得られてはいまい。だが、コスタリカ代表と交流した子供たちにとっては、世界には多様な人たちが存在すること、自分たちとは異なる価値観や生活リズムの文化があることを、体感する良い機会となった。
  この交流を一過性のものとせず、これを機に、将来を担う子供たちが、持続的な国際交流と異文化理解に取り組めたならば、長期的には、その効果は絶大であろう。
  幸い鈴鹿市には、コスタリカの都市との姉妹提携の話もある。国家予算の4分の1を教育費にかける中米の非武装中立国コスタリカとの、息の長い交流の効果に期待したい。